バアバの直売所デビュー

うちのバアバが直売所デビューをした。

いまのところ結構売れて楽しいらしい。

直売所は誰でも出せる。畑の場所、使った農薬、どんなふうに育てたかなど、

記入する紙に詳しく書く。

そこの直売所のルールに従って出すのだけど、大体はこんな感じ。

出したいものの『栽培履歴書』を提出。

どんな農薬や肥料を何日にどのくらいの量、どのくらいの広さの敷地の農地にまいた、

など。

会社だったら出納帳をつけるように農家は栽培日誌を書く。

決算書をお役所へ提出するように、栽培履歴書で正直に申告をする。

そう、自己申告です。

その直売所の会員の権利を得たら、ルールを教わりながら納品をしていく。

売れれば2割から3割を直売所に収める。品物の管理は自分でする。

売れ残ったものは持ち帰るし、梱包なども自分でするのだ。

私も直売所には出したことがある。

野菜が余ったとき、知り合いの直売所で。

(ただ、見えないルールがあり。直売所に出す基本ルールのほかに、組合長的な人に話を通すとか、そういうの。野菜の流通、安易に手を出してはいけない領域だと理解した)

直売所に出すのは楽しい。ただ、問題が一つ・・・。

自分の畑でトウモロコシが豊作のとき、みんなの畑もトウモロコシは豊作である。

なので、だれよりも早くトウモロコシを出した者はやっぱり売れる確率が高い。

名前がブランドになって『あの人の野菜なら間違いない』という評価を得られることも。実際、私も裏を見てジャケ買いならぬ名前見て買いをする。知人が出している直売所で。

私は、たまたま余った野菜を出させてもらっただけだったのでそれきりで、その後、直売所とかかわることはなかった。

『野菜100円だとして、おいらの車ってガソリン代1リットル150円なんだよな』

みたいに考えていった結果、農業は初期投資にお金がかかりすぎると思った。

ちなみに自分の管理している畑は2畝です(ニセ、と読みます。大体60坪くらい)。

もし、ゼロから始めて、親の農業を継ぐとかじゃなく、新規就農者になって、サラリーマンくらいに収入を得たいと思ったら、

1町歩くらい(3,000坪)耕作しないと儲かるレベルにならない。無理。

そんだけ頑張っても機械や農具で体を切ったりするリスクまである。無理。

と思った。もうそれきり直売所には出すことはなかった。給食関係にも出してみた(初心者が農業をしていると、農政課やらお役所の方々が出したら、とお膳立てしてくれる)けど、同じような考え方に行き着いてしまった。

うちのバアバは、先祖の畑を頑張って維持して、今まで何十年も

出荷に十二分に耐えうるレベルの生産物をつくりながら、子供や親戚に配るためにだけ生産してきた。

長男の嫁なので、ときには「いちご狩り」的なイベントを親戚関係に許したりして喜ばれていた。

わー大変、と思って、つねづね、「それもいいけど、半分くらいは売ってもいいのに」と思っていた。

売るにも準備や手間がかかる。今までは兼業農家だったため、細かいことに時間がさけなかった。介護もあったり、すごいプチブラックな状況だな、嫁。

昔、農業を営んでいる方にいろいろなお話を聞いたことがあって、何でもその方がおっしゃるには、

人間一人が管理できる限界は1町歩、なのだそうだ。

あと別の方だが、ものすごい秘境の地で農業を営んでいる方が、たまたまお米を分けてくれたとき、

「へー、すごいですね、お仕事しながら稲作してるんですね。田んぼって広いんですか」

と何気なく聞いたとき、

「いえいえ、ほんの一町歩(3,000坪)ですよ~笑」

「広っ(笑)」

ということがあった。

機械を入れたりでクワでなんかもちろんしていないと思うし、

アメリカとか外国は、大型機械で企業的農業なのだと中学校で教わった。

私は30万円のホンダサラダと8万円のビーバーを購入して、やっと「畑」の管理ができるようになった。それでも2畝が限界。

一町歩なんて、どんな世界なんだろう。

私は、畑を100歳になっても仕事場にして楽しむことが、できたら幸せだな。

機械は両方新品で買ったので、何十年かは使いたいな・・・。

機械もそうだけど、自分も動けなければ。

畑(スポーツジム)で草取り(筋トレ・ストレッチ)して健康寿命を延ばして、

千疋屋(と呼んでいる親がつくった果物)や成城石井(自分で作った野菜、師匠がくれる野菜の総称)の

おいしい野菜や果物を食べていたら、

いつまでも健康で長生きできるんじゃないだろうか・・・・。

そんなふうに思っているけど年々、確信に変わってきている。実際、自分の祖父母たちは農業しながら100歳近くまで長生きした。

直売所デビューしたうちの母だが、

ものすごく安い値段で出しているようだ。

それで怒られないか心配になってしまう。

それには理由があるとのこと。あるとき棚に桃を並べていたとき、

「モモ食べたーい」「高いから買えないよ」

という幼児連れの親子の会話を小耳に挟み、

「なるべく安めに」価格設定し直したそうだ。

お金持ちには、なれないタイプ・・・。

この間、バアバは柿を売り場に並べていた。

渋柿を焼酎とビニール袋に入れておくと、甘柿になる。柿の渋みの元となるタンニンをアルコールと反応させ二酸化炭素・・・なんちゃらかんちゃらすると、甘くなる。

「さわし柿」という。

直売所にもシールのバーコードがあったので商品として可な、オーソドックスな商品らしい。

柿があんまり好きではない私も手伝ったけど

「こんな、売れるんかいな」と思った。

巨峰やナシが並ぶ棚に、ちょっと遠慮しつつ、ガンガンと並べてみた。やはりだれも手を出さなかった。みんな素通りしていく。しんみり切なくなった。

~後 日 談~

でも・・・!

後で聞いたところ、ほとんど売れたらしい。

柿が売れるのは本当に良かった。

柿はお庭に勝手にできる。そして、もったいないと、私の家に届くのだ。

自産自消で、いつもうちに分けてくれてありがたいんだけど、けど、けどね。

バアバ「食べて、柿の季節だからたくさん食べて」

子供「こんなにたくさんいらねえええええ」

と、ありがたいけど胃袋は限界があるし、そのうち腐ってしまう、みたいなかわいそうな末路だった果物たちが、

活路を見出して輝き始めた、ということだ。

バアバの直売所デビュー、無事に果たせてよかったね。

親戚に配る予定の果物を直売所に出すとか出さないとかで、ジイジとケンカがあったとも聞いた。

そうなんだよ~、大体お金の絡んでくるところにトラブルあり、なのだ。

私はやっぱり一人で畑仕事を楽しもう。しばらく売るとかそういうことは、考えないで技術を磨くのだ。(その前に草取り)

玉ねぎもしっかり根付いたみたい。

忙しい中、無理に時間をつくって早く植えてよかった。

オジイの作ってくれた苗が、まだ500本くらい余って段ボール箱に入っているけど、

いつ植えてくれるんだよう・・・って感じで待っているけど。

晴天の10月が終わり、また台風のきざしを感じる今日このごろ。

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